帰路 / 青藍瑠璃

 赤くなった木々に挟まれた並木道。茶色くなった枯葉が遊歩道の上をカラカラ転がっている。隣には好きな人。白いパーカーの上からベージュのチェスターコートを羽織っているのが似合う。ボトムスは安定の黒スキニーで、ふわふわした茶髪の上にはベロア素材の黒いハットを被っていて、その隙間から見える耳が愛おしい。
 聡の容姿が好きだ。もちろん容姿だけじゃなくて、優しいところも頭がいいところも、意外と甘えん坊なところも努力家なのを人に見せないところも、今大根やらお豆腐やらビールやら重たいものをさらっと持ってくれちゃうところも好き。でもやっぱり見た目がとても好きだ。今だってほら、通った鼻筋も、広い二重幅やぷっくりした涙袋、白い肌と茶色の瞳も、密度の濃い長いまつ毛も、細くて柔らかな猫っ毛も、丸まった背から細い足まで、太陽が低くなってきたせいか全部キラキラして見える。
 少し後ろから見蕩れていると、聡がパッと振り返った。
「真奈見すぎ。ほら」
 彼は私の手を取ってそのまま無造作にコートのポケットに手を突っ込んだ。先程まで一人で入っていた手の温もりが残っていて温かい。半強制的に隣に引き寄せられ、距離が近くなる。恥ずかしくなったのでもう片方の手で薄手の赤いチェックのマフラーを口元まで引き上げる。少し熱い頬を冷たい風が撫でていく。
「手ぇ冷たっ。寒いからはやく帰ろ」
「今年初お鍋楽しみだねえ」
「何鍋?普通に昆布のやつでいっか」
 そっと盗み見ると聡は気恥ずかしそうに目を瞬かせ、まつ毛の透ける影が白い肌の上でフサフサ揺れていた。顔がよくて可愛くて心臓がぎゅっと握りしめられたような気がした。

めらたん

日本大学芸術学部、未公認サークルの「めらたん」です。エモーショナルな短文を書いています。

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